とてもひさしぶりの更新になってしまいました。タイトルを見れば明らかですが、近況報告です。
近況報告
長男くんは4月で5歳になり、ラスベガス学園という日本語補修校に通い始めました。ご縁があって、わたしもラスベガス学園で長男くんと同じ年中さんのクラスを担任することになって、2023年4月から先生をやっています。
週に1回の授業だけれど、もうすぐクラスの回数が10回にさしかかろうというところでやっと慣れてきたかなという感じです。わたしも、小学校6年生にあがってニューヨークの郊外に家族で引っ越したときは補修校でお世話になったし、ちょっとした恩返しができているかな。
ラスベガスの学校は5月末でおしまいで、約2ヶ月後の8月の頭に新年度が始まります。だから本当なら5月末から日本に長期で帰ろうかなと思っていました。
でも、次男くんは7月にやっと3歳になってまだ手がかかるし、日本では一時預かりを活用しなくてはいけなくて手続きも大変だし、今年の夏は一時帰国を断念しました。で、こどもたちをラスベガスのサマーキャンプに入れた矢先の出来事。
年に1回のマンモグラフィから生検に
ラスベガスに来てからもうすぐ3年が経とうとしているけれど、1年に一度マンモグラフィを受けています。今年受けたマンモの結果が出て、もう一度詳細に見ましょうと言われてしまいました。日本人?アジア人?に多いらしいのだけれど、胸の組織が高濃度で悪性のものがあっても発見しにくいんだそうです。
ということで2度目に疑わしい左胸だけマンモグラフィをやったら、その場で放射線技師の先生に「石灰化(せっかいか)(英語でCalcification)がすごく多くて範囲も広いから生検しましょう」と言われました。なんのこっちゃ?
その後、4月18日に実施した生検は、施術自体は比較的軽いもののはず。でも、マンモの要領で胸をぎゅっと挟んだまま下を向く姿勢で行われるので出血が止まらず、計2時間半かかってしまいました。
でも、ナースはすごく優しくて、出血しすぎた&朝ごはんをバナナしか食べておらず貧血を起こしたわたしを寝かせてくれて、ずっと付き添ってくれました。あとからドーナツでも持ってお礼をしにいきたいと思うくらい優しかった。感謝(涙)。
“I have bad news”
生検の結果が出たのは1週間後。電話越しの主治医の言葉は、”I have bad news. You have invasive ductal carcinoma(浸潤性乳管癌)”でした。
その後もいろいろな検査をして、ステージ3、グレード3であることがわかりました。ステージは1〜4まであって、4が一番深刻で癌が発生した場所から転移しているということ。グレードは、がん細胞がどれだけアグレッシブかということで、やっぱり4が一番勢いがあって、わたしは40過ぎで比較的若いほうなのでがん細胞にも元気があるらしいです。
主治医の先生から乳がんだと教えられたとき、ちょうど旦那氏はサンフランシスコ出張。本当はもう一晩泊まるはずだったけれど、翌日にMRIの予約がとれることがわかって急遽帰ってきてもらいました。4月26日に胸のMRIをとりました。
手術医とがん専門医と対面
5月4日(木)にBreast surgeon(乳腺外科の手術医)とOncologist(ガン専門医)に会いました。2人の先生のアポのあいだに、”May 4th (fourth)”にかけて”May the Force be with youと名前のついたファミリーランチが次男くんの学校であって。
朝に会った手術医は、「あなたの場合は胸の大半が癌だから全摘出するしかないわね。右側も将来また再発することを考えるととってしまったほうがいい」と淡々と言われた後で、なんかまだその事実を受け入れることもできないまま、ぼーっと参加しました。でも、ひょうきんな次男くんに救われたかな。
外科の先生は必要以上は言わないサバサバした女医さんで、いっぽうのガン専門医はもっと細かくいろいろ説明してくれて、いま手元にある情報をもとにすると治療はこんな風になると思うなど教えてくれました。まだ自分が乳がんだという事実が浸透していないから、聞くべき質問も思いつかず、ただただ先生が投げてくる情報に頷いていた感じ。
先生が「あなたの場合は癌が大きい(8cm)し、リンパへの転移もありそう。今の時点で手術をすると、リンパ節も取り除かなきゃいけないし、将来的に合併症などが起こり得るの。だから、まずは抗がん剤治療をして癌を小さくしてから手術、その後さらに放射線治療をする流れになると思う」と。
この日、手術医の先生のオフィスを出てから車のなかで少し泣いたけれど、「抗がん剤治療」という言葉を聞いたときにもっと涙が出た。抗がん剤治療にはとにかく怖いイメージがあったし、髪の毛が抜けてしまうのもわかっていたし、そうか、自分がそれをやるのかって。
転移していなかった
先生たちと会った後に、採血でやる遺伝子検査を受けました。遺伝性のものならもう片方の胸にも将来的に同じことが起こり得るから両方とってしまったほうがいいという判断材料になる。
その後、5月11日には抗がん剤治療のマンツーマンの授業を受けて、PETスキャンという全身のスキャンや脳のMRIをやって胸以外に転移していないかを調べました。
この転移していないかの検査をしてからの待ち時間がもう永遠に感じられました。転移していれば、現在のステージ3からステージ4に変わるわけで、もしそうなったら自分は死ぬのかな、どうなっちゃうんだろうっていう不安がすごく大きくて。
結局検査から1週間ほどしてあったがん専門医に「転移してなかった」と言われたときは心底ホッとしたし、感謝しました。胸だけか。胸だけなら立ち向かえる気がするって。
当事者感がまだ湧かない初期
乳がんだと宣告されてからもうすぐ1ヶ月経つけれど、こういうニュースは実感が湧くまでに時間がかかるね。実際に初めてみてやっと現実になるという感じかもしれない。
そういう意味では、ちょっと子育てに似てるかも。どれだけ本を読んで、どれだけ周りで子育てをしている人たちを見ていても、実際に赤ちゃんを産んで育て始めるまで親になる実感って沸かない気がする。自分は親なんだって。
それと同じで「乳がんです」って宣告されたけれど、実際に治療を始めるまでは現実味がないところがある。ただ、そこそこの頻度で胸がちくちくするので、そのときは自分がガンであることをリマインドされて怖い。
結局、5月24日に初の抗がん剤治療を受けました。これまでは癌にやられっぱなしだったので、副作用なんかがあっても反撃してアクションをとれていることはよしゃって感じ。
いまの比較的マイルドな抗がん剤のお薬を毎週計12回、その後AC(またの名をRed Devil…薬の色が赤いから)という一番強いお薬を隔週計4回やります。ACのときはみんな死ぬらしい…。
乳がんであることを公表することに
家族や近しい友達なんかにはすでに伝えていたけれど、最近その輪の外の人たちにも少しずつ伝え初めています。わたしは日本人のメンタリティ、あと人に頼らない自分の性格もあって、あまり言わないでおこうって思ってたの。
だけど、ある意味わたしよりショックを受けている旦那さんやアメリカ人の義母に、どこでどんなサポートが見つかるか、繋がりができるかわからないし、別に隠すことじゃないし、話すべきだって言われて考え直しました。髪の毛抜けたらいやでもバレるし。
今朝も家族付き合いをしているファミリーのママさんに伝えたら、彼女が泣いてしまって、わたしももらい泣きしてしまいました。でも人に話すことで、わたしの友達もとか、お母さんが乳がんだったとかいろいろ話を聞かせてもらえるから、それも励みになっています。
“You are a survivor from day one”
長男くんの学校にいる先生で、ご家族だとかお友達なんかがガンにかかったことをきっかけにガンの啓蒙活動とか、ガン患者のサポートに力を入れている先生がいるのね。いつもすごく明るくているだけでパワーをもらえそうな感じな人なんだけど。彼女に乳がんだってことを宣告したらいろいろ応援のメッセージをくれて、言われて印象的だったのは”You are a survivor from day one”って言葉。
ガンだと宣告された日から、あなたはサバイバーなのよ。サバイバーっていうのは生存者だということだけれど、治療や手術をまだしていなくても、ガンがあっても今生きているんだからって。1日目からサバイバー。
すごく素敵な考え方だなと思いました。この先生や、周囲の親しいお友達、日本人学校の先生とか、本当に人に恵まれているなと実感させられます。人生ってほんといろいろあるけれど、ひとつだけ自分の人生について言えることがあるとすれば、人に恵まれているということ。本当に感謝しかない。
自分ごとできるかどうか
わたしが乳がんだってことを話した相手の反応は本当にいろいろあって人によるのだけれど、結局その違いの根源は、癌がどれだけ身近かってことなんだと思う。親が癌で闘病してる人はニュースを知った時のショックだとか、闘病生活の大変さだとかを身をもって知っているからすぐわかってくれる。身近にガンで苦しんだ人とかがいないと自分ごとできないから、「へー、大変そう。心配」とかで終わってしまう。
たぶんこの辺の違いは癌になった人はわかっていて、その他人ごとに感じる感に危機を感じて、完治した後も、啓蒙活動をするのかなって思う。これまで一切癌に触れたことのない人にとって癌は未知なもので、だから他人事に感じる。自分ごとできない。
でも、乳がんは今はアメリカでは8人に1人がなる病気だし、決して他人事じゃないのよ、だから気をつけてね。マンモグラフィーを定期的に受けてね。癌を自分には関係ないものと思っている少し前の自分みたいな人に意識してもらうきっかけになったらいいな。こんな思いを他の人にしてほしくないから。
ということで1年ぶりの更新でこんな近況報告になりましたが、子育てをなんとかしながらがんと向き合う生活について、無理のない範囲で記録していきたいと思います。インスタグラム(yukari77)でも近況を報告しているので、よかったら見てね。hearmamapodcast[at]gmail.comです。何かあればメールで連絡ください。